1996年10%句(前日までの二句を含む)

October 10101996

 秋晴の運動会をしてゐるよ

                           富安風生

書に「北海道を縦断して、一日汽車に乗り通す」とある。子供みたいな句ですが、面白いですね。俳句は、短歌でも現代詩でもない。こうした句を読むと、つくづくこの世界の懐の深さが思われます。パソコンなんて捨てちゃって、それこそ秋晴れの下、一日中汽車に乗り通してみたくなってくる。窓際には、冷たい缶ビールと上等な乾き物を少々。こんなふうに思わせるところが、俳句の力だというべきでしょう。(清水哲男)


October 09101996

 すっぽりカーテン女子寮は青無花果

                           小堤郁代

住んでいた集合住宅の裏手に、某女子短大の寮があった。夕暮れ過ぎともなると、いっせいにカーテンが引かれて、まさに青い無花果(いちじく)の観。住人も、みんなまだ青い果実。のぞくつもりじゃないけれど、帰宅のたびにいやでも目に入った。寮全体がじいっと息を詰めて何かを警戒しているような雰囲気は、かえって不気味に思えたものだ。あのころ毎夜きちんとカーテンを引いていた乙女らは、いま、花も実もある人生を生きているだろうか。(清水哲男)


October 08101996

 雨だれの棒の如しや秋の雨

                           高野素十

は意外に雨の多い季節。この雨は本降り。雨だれもショパンのそれのように優雅ではない。しかし、なぜか心は落ち着く。あたりいちめんに、沛然たる雨音と雨の匂い。だんだん、陶然とした心持ちにすらなってくるのである。(清水哲男)




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